■ 2012年度 新講習会
2012年度からの講習会について内容を再構成し、材料から各種性能、設計例まで、木造建築物の設計、施工等に必要な基礎知識と最新の情報を網羅した体系的な講座構成の新講習会をスタートしました。9月下旬からは2012年度開講の後期講座が始まります。新講習会の全体構成や講座内容をご覧いただき、皆様ふるってご参加ください。
(講習会事業幹事 河合直人)

■ 全体構成
講座は入門編、基礎編、応用編に分けて同時開催。
<入門編>
対象者:学生、木造の初学者、住み手等
参加費:2,000円(14回分)(社会人は別途)
14回(原則90分)の講座を3講座用意(初級、中級、上級)。年間、そのうち2つ実施。
<基礎編・応用編>
対象者:木造建築にかかわるすべての人
参加費:1講座2万円〜3万円程度。
基礎編と応用編はそれぞれ6講座を用意し、隔年で3講座づつ、年合計6講座を開設(2年間で全12講座を開設)。原則として基礎編は年度前半に、応用編は年度後半に開講。各講座は年4〜6回(90分×2コマで1回)。
■ 講座概要
<入門編/初級、中級、上級> = 実習型講座
*2012年度は前期に初級、後期に上級を開講します。
内容は現在開設中の「建築系学生のための木造建築学」東京都市大学大橋研究室ホームページをご参照ください。http://ohashiken.web.fc2.com/
<基礎編/6講座> = 性能項目ごとの講座
*2012年度は前期に1〜3を開講。
- 木質材料・耐久性 >> 受付終了
内容:木材・木質材料の基礎知識、地球環境、森林資源の現状、耐久性
- 木造住宅の構造設計 >> 受付終了
内容:壁量計算、接合部、水平構面、地盤と基礎、架構設計
- 住宅の温熱環境・設備 >> 受付終了
内容:省エネルギー性、住宅の断熱気密、設備的対応技術
- 防耐火設計 >> 2013年度 前期開講(予定)
内容:基準解説・事例紹介・住宅系・非住宅系・耐火木造
- 木造建築史 >> 2013年度 前期開講(予定)
内容:木造建築の歴史、民家の歴史、文化財保存、歴史的街並
- 海外木造建築紹介 >> 2013年度 前期開講(予定)
内容:世界各地の木造建築の紹介
<応用編/6講座> = 建物種別、その他トピックス
*2012年度は後期に1〜3を開講します。
- 公共建築・中層木造建築 >> ★受付終了
内容:設計法、法令、事例、実験等最新情報
- 木造建築の許容応力度設計 >> ★受付終了
内容:許容応力度設計、その他の構造計算
- 木造建築の保存・活用 >> ★受付終了
内容:文化財等の保存・活用、まちづくり、民家再生
- 地震津波被害・耐震診断・耐震補強 >> 2013年度 後期開講(予定)
内容:被害の実態、診断法の解説、補強の実務
- 木造住宅の設計・計画 >> 2013年度 後期開講(予定)
内容:性能の要求を形にする設計の実際、事例、仮設住宅・復興住宅
- 伝統木造建築 >> 2013年度 後期開講(予定)
内容:材料、構造、防火、室内環境、設計事例
■ 募集案内
<入門編>
下記HPに掲載の連絡先へお問合せください。
http://ohashiken.web.fc2.com/
<基礎編・応用編>
2012年度に開講する前期3講座(基礎編)の詳しい内容と後期3講座(応用編)の日程につきましては下記をご覧ください。お申込みはどの講座もフォラム事務局で一括承ります。参加申込方法にそってお申込みください。
■ 会場案内
・前期講座/基礎編(1)〜(3)の会場
AGC studio(旭硝子ショールーム内)
住所:東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館2階
Tel: 03-5524-5511 Web:http://www.agcstudio.jp/
アクセス:地下鉄京橋駅の出口すぐ、またはJR東京駅八重洲南口より徒歩10分
・後期講座/応用編(1)と応用編(3)の会場
AGC studio(旭硝子ショールーム内)※上記に同じ
・後期講座/応用編(2)の会場
東京大学農学部 7号館A棟114・115番教室
住所:東京都文京区弥生
アクセス:地下鉄南北線・東大前より徒歩5分
■ 2012年度・前期日程 ─ 終了しました ─
<講座一覧>
基礎編1「木質材料・耐久性」講座
計5回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般3万円、会員2万5千円(※5回通し)
【主旨】平成14年から9年間にわたって開催してきた木材塾を発展的に再編し、建築材料として木材・木質材料を使用する上で必要不可欠な基礎知識を身につけて頂くことを目的として、「基礎編:材料・耐久性講座」を開催します。木材と一言でいっても現代の木造建築には、集成材や合板等様々な材料が投入され、市場流通しています。一方、木材は生物材料であるが故の様々な特性があり、これが長所として有効な場面が多いのですが、ひとつ使い方、設計方法を間違えると大きな欠点となってしまうこともあります。そこで、これからの木造建築をより豊かで快適なものとするための基本となる材料の特性やその耐久性について、全5回の講習会を企画しました。
○第1回
テーマ:木材と水・乾燥、木材の乾燥方法と材料・接合強度
日 時:2012年5月12日(土)13:15〜16:30
講 師:信田 聡(東京大学)、槌本敬大(国土技術政策総合研究所)
○第2回
テーマ:地球環境と森林資源、木造建築物と炭素収支
日 時:2012年6月2日(土)13:15〜16:30
講 師:有馬孝礼(東京大学名誉教授)、中島史郎(建築研究所)
○第3回
テーマ:木材、集成材等構造用軸材料の強度特性と規格
日 時:2012年7月7日(土)13:15〜16:30
講 師:長尾博文(森林総合研究所)
○第4回
テーマ:合板、OSB等構造用面材料の特性と使い方
日 時:2012年8月4日(土)13:15〜16:30
講 師:渋沢龍也(森林総合研究所)
○第5回
テーマ:木造建築物の耐久性
日 時:2012年9月1日(土)13:15〜16:30
講 師:中島正夫(関東学院大学)
基礎編2「木造住宅の構造設計」講座
計5回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般3万円、会員2万5千円(※5回通し)
【主旨】我が国の2階建て以下の木造住宅の大部分は、壁量計算を主とする仕様書的規定に基づいて設計されています。壁量計算自体は昭和25年の建築基準法制定時に定められましたが数度の改正を経ており、2000年の基準改正では、接合部や釣合い良い配置などの詳細な規定が付け加わりました。これらの規定により、一般の木造住宅の耐震性能、耐風性能の確保が図られていると考えられます。また、品確法でも同様の壁量規定その他の仕様規定で耐震等級耐風等級の性能評価が可能となっています。本講座では、これらの規定を踏まえながら、木造住宅の基本的な耐震設計、耐風設計の考え方を改めて学び、木造住宅の構造設計の基礎を再確認して頂きつつ、最新の研究動向や新たな知見を紹介し、ともに考える場を提供したいと思います。
○第1回
テーマ:木質構造の概要と壁量設計
日 時:2012年5月23日(水)18:00〜21:00
講 師:大橋好光(東京都市大学)
○第2回
テーマ:性能表示の壁量設計、偏心・柱頭柱脚
日 時:2012年6月27日(水)18:00〜21:00
講 師:河合直人(工学院大学)
○第3回
テーマ:水平構面等の検討
日 時:2012年7月25日(水)18:00〜21:00
講 師:佐藤 実(株式会社M's構造設計)
○第4回
テーマ:地盤と基礎の設計
日 時:2012年8月22日(水)18:00〜21:00
講 師:松下克也(ミサワホーム総合研究所)
○第5回
テーマ:横架材の設計・耐力要素の評価法
日 時:2012年9月26日(水)18:00〜21:00
講 師:松留愼一郎(職業能力開発総合大学校)(予定)、道場信義(ハウスプラス)
基礎編3「住宅の温熱環境・設備」講座
計5回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般3万円、会員2万5千円(※5回通し)
【主旨】近年、増加し続けている住宅でのエネルギー消費への対応、そして3.11以降、エネルギーの安全性の確立が求められている中で、いま住宅として目指すべきものは何か、先端的な地域住宅の取組みから見えてくるものは何か、様々な事例やその検討結果を紹介しながら、これからの住宅づくりの省エネルギー性と環境に関する幅広い先端情報と基礎知識を学び、設計又は施工にあたっての応用力をつけるための講座です。住宅の断熱構造化、日射遮蔽、設備とともにエネルギー全体の課題を含めた総合的見地から考えることを目的としています。今年スタートの住宅の設計に必需となる新規の講座です。
○第1回
テーマ:設備的対応技術と一次エネルギー予測
日 時:2012年5月26日(土)13:15〜16:30
講 師:澤地孝男(建築研究所)
○第2回
テーマ:これからの住宅省エネルギー動向、環境の質と省エネの両立を目指して
日 時:2012年6月23日(土)13:15〜16:30
講 師:鈴木大隆(北方建築総合研究所)、金子一弘(金子建築工業株式会社)
○第3回
テーマ:建築的対応技術―木造住宅の断熱・気密、日射遮蔽の考え方と取組手法
日 時:2012年7月28日(土)13:15〜16:30
講 師:砂川雅彦(株式会社砂川建築環境研究所)
○第4回
テーマ:省エネ改修技術(断熱・設備改修)
日 時:2012年8月25日(土)13:15〜16:30
講 師:砂川雅彦(株式会社砂川建築環境研究所)、新井政広(株式会社アライ)
○第5回
テーマ:今後の省エネルギー基準を見据えた総合的見地からの対応
日 時:2012年9月15日(土)13:15〜16:30
講 師:澤地孝男(建築研究所)、鈴木大隆(北方建築総合研究所)
>> 終了報告
2012年度 前期講習会の報告
新しく再編された基礎編「木質材料・耐久性」では、構造用木質材料としての木材の性質や、これを原料とする木質材料の規格や特性にとどまらず、森林資源、地球環境、木材利用における炭素収支など多岐に富んだテーマでその分野の研究を主導する各講師の先生方にお話しいただきました。
各先生方が現在取り組まれている研究のご紹介もあり、天然乾燥と人工乾燥、新しい木質材料のお話など、大変興味深い講義が行われ、木造建築の設計を業務としていてもなかなか普段触れる機会のない木質材料学のエッセンスを短時間で効率的に学ぶことができたと思います。
受講者の多くは設計者や建材生産に携わる方で、大変意欲的に講師の方々に質問をされていました。設計実務に携わる方はもちろん、これから実務の世界に入っていく学生にも大変勉強になる講座であったと思います。来年度以降、学生会員の皆様にもぜひお申込みいただければ幸いです。
(講習会事務担当:渡部 博)
4月より毎月1回、全5回で開催致しました本講習会には、受講者定員が30名のところ、28人の方に参加頂きました。内容が基礎編ということもあり、学生や建材メーカーの方、構造設計の実務者の方まで、幅広い職種の方々に受講して頂きました。講師陣も、講義の組立てを工夫して、大学等で木造の構造について講義を受けていない方や構造を専門としていない方でも取り組み易い内容であったと思います。また、実務の経験者でも、基礎知識の再確認が出来る構成になっていたと思います。
内容は、主に建築基準法上でいわゆる4号建築物と呼ばれる木造住宅について、単に構造関係の規定を解説するのではなく、設計者が構造の計画に当たり、一貫して持たねばならない基本的な考え方を特に強調して解説頂いたと感じております。
講義の範囲は、壁量による設計方法を中心に、性能評価の技術基準までの解説をして頂きました。また、木造の実務者にとって関心があっても不得手の方が多いと思われる、基礎の設計についても解説頂きました。更に、経験的に計画されることの多い床組み等の架構を理論的に計画する手法について、演習により受講生に体験して頂きました。
本講習会は構造設計の入門編として概説に留まる部分も多くなりましたが、これを足掛かりとして、他の木質構造の設計に係わる講習会へステップアップし、深化していただければ幸いです。
(講習会事務担当:道場信義)
−夏は涼しく、冬は暖かい木造住宅を地域環境に合った手法で実現したい−
今年度から温熱環境講座が新規開設しました。
最先端の様々な省エネの取組を検証しながら、これからの木造住宅の省エネルギー性と環境に関する幅広い情報と考え方を学び、設計及び施工に際して本格的に取り込む力となる講座で、省エネ基準の見直しが進められている今、タイムリーな熱い講義となりました。
連続5回の内容は住宅の断熱構造化、日射遮蔽、設備とともにエネルギー全体の課題を含めた総合的見地から考えることを目標にしました。講師には、温熱環境分野でご活躍中の澤地孝男氏、鈴木大隆氏、金子一弘氏、砂川雅彦氏、新井政弘氏の5名による連携で、省エネの今後の動向、基準の指標・考え方→地域住宅の先端的な取組と課題について検証を加えた事例の紹介→断熱構造化の手法→断熱改修技術(リフォーム)をリレー式展開で勉強しました。
受講者は仕事上で日頃から省エネの工夫に取り組んでいる人が多く、熱心な雰囲気でした。
次回が待たれる講座となり感謝しています。
(温熱講座担当:片岡泰子)

■ 2012年度・後期日程 ─ 終了しました ─
<講座一覧>
応用編1「公共建築・中層木造建築」講座
計5回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般3万円、会員2万5千円(※5回通し)
【主旨】近年、2010年に施行された「公共建築木材利用促進法」では、公共建築物における木材の利用が謳われ、一方、4階建て以上の中層建築物を木造でつくる構造や防火の技術開発も進んでいる。また、学校建築に関しては、防火の規制緩和を見据えた研究プロジェクトで火災実験も行われている。こうした状況を踏まえ、本講座は、公共建築物、中層建築物、大規模建築物等を木造で設計するための計画、構造設計、防耐火設計、耐久性設計等に関する最新の情報を提供するとともに、実例に基づいて実務でのポイントを押さえ、木造建築物の将来像をともに考える場を提供する。
○第1回
テーマ:中層・大規模木造の計画と実例
日 時:2012年10月26日(金)18:00〜21:00
講 師:杉本洋文(東海大学)
○第2回
テーマ:中層・大規模木造の防耐火設計
日 時:2012年11月9日(金)18:00〜21:00
講 師:安井 昇(桜設計集団一級建築士事務所)
○第3回
テーマ:中層・大規模木造の構造計画・構造設計
日 時:2012年12月21日(金)18:00〜21:00
講 師:腰原幹雄(東京大学生産技術研究所)
○第4回
テーマ:中層・大規模木造の遮音及び温熱環境・設備設計
日 時:2013年1月25日(金)18:00〜21:00
講 師:平光厚雄(建築研究所)
野沢正光(野沢正光建築工房)
○第5回
テーマ:中層・大規模木造の耐久性
日 時:2013年2月22日(金)18:00〜21:00
講 師:中島正夫(関東学院大学)
応用編2「木造建築の許容応力度設計」講座
計4回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般2万5千円、会員2万円(※4回通し)
【主旨】昨年まで10年にわたり開催されてきた「木構造塾」を再編した講座です。
「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年版)」(以下、新グレー本)が、2008年に発刊され、木造軸組工法建築の許容応力度計算の新たな指針になった。しかし、建築基準法ほか関係告示を含め、難解な部分も多く、また物件によりモデル化や解釈、適用範囲など捉え方はまちまちであり、確認申請その他申請者側と審査側にも見解の相違がしばしば見受けられる。
そこで本講座は、木造軸組工法の構造設計における関係規定や許容応力度計算の理解を深めることを目的とし、その先に今後増えてくると予想される中・大規模木造の構造設計への対応力を養うものである。
講 師:稲山正弘(東京大学大学院)
会 場:東京大学農学部教室
○第1回
テーマ:木造軸組工法の構造関連法規および構造計画と適用条件
日 時:2012年10月6日(土)13:00〜16:30
○第2回
テーマ:構造用製材と木質材料の種類と品質基準
日 時:2012年10月27日(土)13:00〜16:30
○第3回
テーマ:水平力に対する許容応力度計算
日 時:2012年11月17日(土)13:00〜16:30
○第4回
テーマ:鉛直荷重と基礎に対する許容応力度計算
日 時:2012年12月1日(土)13:00〜16:30
応用編3「木造建築の保存・活用」講座
計4回(90分2コマ/1回)
定 員:40名
受講料:一般2万5千円、会員2万円(※4回通し)
【主旨】個人資産の延命とリノベーションという動機づけから出発した古民家の再生は、より広く保存・活用という概念として、地球環境と共生し、地域文化を熟成させるという観点から根づきつつあります。ところが東日本大震災により、歴史的に培われた地域景観の断絶が懸念され、家づくりや町づくりを支える地域社会の持続可能性が問われています。
本講座では、このことを日本の住文化に共通する危機ととらえ、改めて既存木造建築の保存・活用について、実践的に活躍する講師とともに考えます。
○第1回
テーマ:価値を見定める「文化財の活用」
日 時:2012年9月29日(土)14:00〜17:00
講 師:豊城浩行(文化庁)
文化財建造物は適切な活用により存在意義が見直されます。活用における留意点について講義します。
○第2回
テーマ:民家の構えと細部に宿る『経年醸成価値』 −岩手の民家再生事例から、残されし地域資源まで−
日 時:2012年10月20日(土)14:00〜17:00
講 師:大沼正寛 (東北工業大学)
超長期住宅先導的モデル事業採択例を紹介し、民家の現代的価値、事業の可能性と課題を考えます。
○第3回
テーマ:過疎地の民家(既存木造)の保全、移築、活用 −島根県を例に−
日 時:2012年11月10日(土)14:00〜17:00
講 師:中谷正人 (中谷ネットワークス)
過疎化、高齢化等の厳しい状況の中で、これからの古民家と地域のあり方を含め展望を紹介します。
○第4回
テーマ:民家再生を通じて考えるこれからの日本の家づくり
日 時:2012年12月8日(土)14:00〜17:00
講 師:降幡廣信(降幡建築設計事務所)
使い込まれた素材やそれらに囲まれた空間の豊かさなど、心の拠り所としての家づくりを講述します。
>> 終了報告
2012年度 後期講習会の報告
本講座は、近年、公共建築物や中層建築物での木材利用技術が進む中で、最新の実務的な情報を提供し、木造建築物の将来像をともに考える場として設けられました。
講師の先生方は、実際に中層木造の設計をされていたり、公共建築物等の木材利用促進法に関連して国土交通省から出された「木造計画・設計基準」の執筆を担当されたりした方々です。計画、防耐火、構造、遮音、温熱環境、耐久性のそれぞれについて、そもそもの考え方から、最新の研究成果、具体的な設計事例まで、充実したお話をいただきました。現在の技術で、どういう木造建築物が設計できるのか、どういった性能まで得られるのか、という全体像を把握する上でも、大変役に立つ内容であったと思います。
21時終了という遅い時間帯ではありましたが、講義のあとには毎回、熱心な質疑応答がありました。最終回に行われた受講者へのアンケートでも、回答者の全員から「大変満足」または「満足」という回答が得られ、その理由として「仕事に直接役立つ」、「周辺知識が身についた」といった回答が挙げられています。会場が東京駅から近い点も、特に遠方からの参加者に好評でした。
(担当幹事:河合直人)
2011年度まで10年にわたり開催されてきた「木構造塾」を再編した講座です。
本講座は、木造軸組工法の構造設計における関係規定や許容応力度計算の理解を深めることを目的とし、前述の内容を深く理解することで、今後増えてくると予想される中・大規模木造の構造設計への対応力を養うものです。
講師は木構造塾に引き続き、稲山正弘氏が務め、10月6日(土)から12月1日(土)までに4回講義を行いました。テーマは第1回「木造軸組工法の構造関連法規および構造計画と適用条件」、第2回「構造用製材と木質材料の種類と品質基準」、 第3回「水平力に対する許容応力度計算」、第4回「鉛直荷重と基礎に対する許容応力度計算」で、基本的な知識から、中・大規模木造建築への応用なども含めた内容となりました。第4回終了後には、木構造塾でも恒例となりました稲山氏が構造設計を行った東京大学農学部のセイホクギャラリーにて懇親会を行いました。各回では受講者から多くの実務上の質疑がされ、懇親会では受講者同士での情報交換や交流が盛況に行われました。
(企画運営:片岡、村上、緒形)

講義風景

懇親会の様子
本講座は、オムニバス形式で全4回の講義が行われました。第1回(9月29日)は、豊城浩行氏より、価値を見定める文化財の活用と題して、豊富な事例を紹介いただきながら、歴史的建造物の活用の留意点を具体的に講述いただきました。第2回(10月20日)は、大沼正寛氏より、岩手の民家再生事例や旧仙台藩内の伝建地区の住宅などを対象に、民家の文化的価値に関する評価書などをお示しいただき、その経年醸成価値を論じていただきました。第3回(11月10日)は、中谷正人氏より、島根県を例に過疎地の民家をどのように活かせるかということを、海外への移築事例を含め、お話しいただきました。第4回(12月8日)は、降幡廣信氏より、最新の設計事例を示していただきながら、民家再生を通じたこれからの日本の家づくりについて考察しました。併せて受講者のうち8名より、自身が関わってきた事例を発表し、保存・活用のフィロソフィーをどのように見きわめ理解してもらうかという点について講師とともに議論しました。(各回参加者は15,16,18,19名)。
(担当幹事:堀江 亨)
■ トルコの伝統的木造建築 講演会 ─ 終了しました ─
■開催案内
■講 師:G.アルン教授(トルコ、イスタンブールのユルドゥズ工科大学)
■テーマ:トルコの伝統的木造建築
■日 時:2012年7月19日(木)14:00〜15:30
■場 所:
東京大学工学部1号館15番教室
(東京都文京区本郷7-3-1 本郷キャンパス正門左,建築学科のある建物)
■アクセス:
地下鉄南北線・東大前駅より徒歩5分
丸の内線・本郷三丁目駅より徒歩10分
千代田線・根津駅より徒歩12分
■参加費:一般2,000円・会員1,000円・学生無料
■人 数:100名
■内 容:
G.アルン先生は、上記のユルドゥズ工科大学で、建築学部構造システム科長をつとめている女性研究者です。トルコの伝統的建築についての造詣が深く、同大学の歴史遺産保存文化センターの所長も兼務している方です。
このたび、先生が日本で開かれる国際会議に出席される機会に、木の建築フォラムでも、講演をお願いすることになりました。
トルコでは最近は木造建築が建てられていないようですが、古い教会(モスク)で13世紀ころのものが残っており、また、1950年代くらいまでは、木造住宅が建てられており、それらが現在も残っています。今回のアルン先生の講演では、これらの伝統的木造建築の構造や構法に関して、興味深いお話が聴けるものと思います。たとえば、丸太組構法、落とし込み板壁工法、大壁構法などがあるようで、日本の構法との比較もできそうです。
また、アルン先生は、かつて1年ほど日本に滞在したことがあり、大の親日家と聞いています。
木の建築フォラムでは、先年、トルコの木造建築を見るツアーを主催しており、その点でも、フォラムにゆかりの国の木造建築です。ふるってご参加ください。
(坂本 功)
■終了報告
G.アルン先生の「トルコの伝統的木造建築」
2012年度の特別講義は、国際会議で来日中のユルドゥズ工科大学のG.アルン教授に、講師をお願いしました。7月19日(木)午後2時より、東京大学工学部1号館15番教室において、司会はこの教室で最終講義をされた坂本功本会理事長、先生の紹介は橋渡しをして下さった親交の永い川口衛先生、通訳は会場も提供して下さった藤田香織准教授、という顔ぶれで始まりました。参加者は会員21名、一般27名、学生13名、関係者を含めると総勢約70名を得て、大変盛況な会となりました。
アルン先生はユルドゥズ工科大学で、建築学部構造システム科長と歴史遺産保存文化センター所長を兼務されている研究者です。トルコの伝統的木造建築について造詣が深く、古代(BC.5世紀)から現代(20世紀中頃)までの具体的な遺構を示しながら、その構造や構法の歴史的変遷を説明されました。
トルコの木造建築は丸太組構法、落とし込み板壁工法の他、軸組構造も大壁構法や石や日干し煉瓦を充填した混構造など種類が豊富で、13世紀頃の古い教会(モスク)や1950年代以前に建てられた木造住宅などは、今も現役で使われているそうです。
トルコで木造建築が建てられなくなったのは、都市火災で被害が拡大し、建築基準法が改正されたからです。しかし、地震によって組積造の建物が崩壊して被害が拡大すると、軽くて地震に強い改良型木造建築が復活した歴史を繰り返してきたそうです。
アルン先生の講演は、地震多発国の日本と比較して技術的興味を引いただけでなく、650年間も続いたオスマントルコの文化的影響力にも関心が向いたようで、伝統的木造建築をトルコへ見に行きたいとの要望が多く寄せられました。(担当:財満やえ子)

G.アルン先生の講義風景(東大1号館15番教室)